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2003年7月掲載

やっぱり事業は法人で・・・?

個人事業と法人はどう違うの?

1 両者の相違点

個人事業でいくのか法人を設立するのか、誰でも迷うところです。確かに事業は個人事業、法人のいずれで行うことも可能なのですから。

では、個人事業と法人の相違は何かと言えば、それは資金規模(事業規模)と事業継続性にあると言えるでしょう。法人を設立すると多くの人から出資を受けることが可能となりますし、法人の行う事業は創業者個人の事業ではなく会社の事業となるため個人一代だけでなく、永続的に事業活動が行われていくことになります。

2 個人事業と会社経営のメリット・デメリット

一般によく言われている個人事業と会社組織それぞれのメリット・デメリットをあげてみます。

  個人 法人
設立手続(登記) 設立登記は不要 設立登記が必要
開業のタイミング 好きなタイミングで開業可能 設立手続き完了後
開業時の資金(資本金) 自由に決められる 法律の定めによる
経理の処理 簡易帳簿での記帳も認められる 複式帳簿での帳簿作成
経費の取扱い 事業関連交際費に制限なし 事業関連交際費に制限あり
社会的な信用 法人より低い 個人より高い
負債に対する責任 すべて個人が責任を負う 出資者の責任に限度がある
事業内容の選択・変更 自由にできる 法的手続(登記)が必要
確定申告 比較的簡単 複雑で面倒
税金の負担 利益に応じて税負担もあがる 原則一定

以上のとおりに、法人組織は個人事業に比して法的な手続きが多く求められますが、このことは法人がある一定レベルの社会的信用を得られることの裏付けとなっているとも言えるでしょう。

「しっかり事業をするのなら法人」と多くの経営者が考えるのも法人の信用の大切さを知っているからです。

主な法人の種類とその特徴

ここでは主な法人の種類とその特徴を見ていきますが、その前に「無限責任」、「有限責任」という言葉を理解していただく必要があります。

無限責任とは会社債務(借金等)に対して株主や社員(=出資者のこと、所謂従業員ではありません)が無限にこれを弁済すべき責任を負うということです。ですから、会社が倒産等した場合は、私財を全てなげうってでも借金等の返済をしなければならなくなります。

他方、有限責任とは、会社債務(借金等)に対して株主や社員が一定限度においてのみこれを弁済すべき責任を負うということです。有限会社や株式会社の出資者がこれに該当します。この2つの言葉はとても重要なのでその違いを押さえておいてください。

1 合資・合名会社

合資会社は、無限責任社員1名以上、有限責任社員1名以上の合計2名以上で構成され、合名会社は無限責任社員のみで2名以上で構成されることになります。社員(=出資者)が2名以上いなければならないため、オーナーが一人で出資して会社を作るということが出来ません。

また、無限責任社員となられる方の負担は相当に大きいものであり、現実には非常に少ない法人組織となっています。

2 有限会社

有限会社は、1人以上の有限責任社員のみによって構成されることになります。

有限会社の大きな魅力は、この「有限責任社員」という点にあります。また、原則として設立最低資本金300万円と比較的少額資本金ですむため、世間の多くの企業が有限会社組織を採用しているのです。

また、法人格を取得して信用を得て開業したい、とお考えの方に好まれているようです。

3 株式会社

有限会社と同様に、1人以上の有限責任社員のみによって構成されることになります。

では、株式会社と有限会社の最も大きな相違は何か、それは設立最低資本金にあります。株式会社は原則として1,000万円が最低資本金となるのです。世間には1,000万円の最低資本金をクリア出来ずに有限会社でスタートした会社も多くあります。

株式会社であれば相当額の資本金を有しているわけで、そのため社会的な信用が最も高い法人と言われるのです。

法人(有限会社・株式会社)の設立手続き

法人はその設立に関して法令に定めがあり、その規定に従い一定の手順で設立手続きを進めていかなければなりません。

さらに、この設立手順は法人の種類により異なるため、設立するタイプの法人にあった設立手続きをとることが必要です。ここでは、代表的な法人である有限会社と株式会社の2つを見ていきます。

1 有限会社

(1)基本事項の決定
  • 目的、商号、本店所在地、社員構成
(2)定款の作成・認証
  • 定款の作成、定款認証(公証人役場)
(3)出資金の払込み

銀行等の金融機関へ出資金の払込みを行います。

(4)役員による調査書作成
(5)設立登記申請

法務局へ法人設立登記申請を行います。

ポートシステムの「有限会社設立マニュアル」で詳しく説明されていますので参考にしてください。

2 株式会社

株式会社の設立の仕方は、「発起設立」(注)と「募集設立」の2つがあります。ここでは、起業の際に多い「発起設立」の手順をみておきます。

(注)発起設立とは

会社設立に際して発行する株式を全て発起人が引き受ける設立方法のことです。

(1)発起人会開催

次の事項を決定します。

  • 商号、事業目的
  • 株式についての取り決め
  • 発起人の人数、発起人総代者名
  • 現物出資の有無
  • 株式払込み金融機関名
(2)定款の作成・認証
  • 定款の作成、定款認証(公証人役場)
(3)株式の払込み

銀行等の金融機関へ株式の払込みを行います。

(4)取締役会開催
(5)取締役・監査役による調査書作成
(6)設立登記申請

法務局へ法人設立登記申請を行います。

(参考)資本金1円でできる株式・有限会社とは

株式会社1,000万円、有限会社300万円の設立時の最低資本金が緩和され、1円で株式会社や有限会社が作れるようになりました。 ただし、設立後5年経過時点で増資により株式会社は1,000万円以上、有限会社は300万円以上の資本金にできない場合、原則として解散することになります。

また、最低資本金に達しない期間は株主への配当が認められず、債権者保護等の面から財務状況の開示、配当制限も義務づけられています。財務的な健全性が低い会社ですから、当然に監視の目(法律)が厳しいものとなるわけで、積極的にお勧めはできません。

事業にかかる税金は

法人に対しては主に次のような税金がかかります。

1 法人税

国が会社の儲け(所得≒利益)に対してかける税金です。所得に対して一定の割合で課税されます。

2 法人事業税

都道府県が会社の儲け(所得≒利益)に対してかける税金です。

3 法人住民税

都道府県が会社へ課す税金で、(1)均等割(資本金等の大きさで税額がきまる)と(2)法人税割(法人税額を基に税額がきまる)の合計からなります。

4 消費税及び地方消費税

仕入105円(内消費税5円)の商品を315円(内消費税15円)で販売すると10円の消費税を納税(預かった消費税15円−支払った消費税5円)することになります。

※資本金1000万円未満の会社は事業開始から二年間は売上にかかわらず消費税の納税義務が免除されます。

5 固定資産税

建物、土地、設備等にかかる税金です。

「助成金」や「起業家向け融資」を活用しよう

事業には想像以上のお金が必要となるものです。自己資金で足りない分は融資等で調達するケースが一般的ですが、その前に助成金の給付が受けられないかをまず検討してみましょう。

1 助成金

開業者向けの助成金としては、次のものがあります。

(1)「中小企業雇用創出人材確保助成金」

本助成金は、都道府県知事から事業計画について一定の認定を受けた開業者又は新設法人が、その計画に基づき労働者を雇用した場合に、8人を上限とし、その労働者の賃金の四分の一を最大で6ヶ月間助成するものです。

創業間もない場合で特定の条件に該当すると、支給額は労働者1人あたり一律40万円となります。

(2)「受給資格者創業特別助成金」

本助成金では、事業開始の前日において雇用保険の受給資格者であり、「中小企業雇用創出人材確保助成金」の支給を受ける個人事業主が、労働者を雇用する場合に雇用管理に要する費用の一部を助成してくれます。助成額は最大で1人雇用時80万円、2人雇用時100万円、3人以上雇時120万円となります。

(3)「都道府県・市区町村の起業家支援補助制度」

都道府県・市区町村が独自に起業家支援補助制度を設けている場合があります。

一度問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。

2 起業家向け融資

起業家向けの融資としては、次のものがあります。

(1)国民生活金融公庫

イ.「新規開業特別貸付」(運転資金)/借入限度額4,800万円

ロ.「女性・中高年起業家貸付」(運転資金)/借入限度額4,800万円

ハ.「新規開業者経営改善貸付」(運転資金・設備資金)/借入限度額550万円

(2)銀行・信用金庫等

「新規事業創出資金貸付」(運転資金・設備資金)/借入限度額1,000万円

(3)「都道府県・市区町村の起業家支援融資制度」

都道府県・市区町村が独自に起業家支援融資制度を設けている場合があります。

是非一度問い合わせをしてみてください。

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