2004年6月掲載
決算書の読み方!―貸借対照表編―
決算二表(貸借対照表、損益計算書)のうち、貸借対照表の読み方を見ていきます。自社の決算書を手元に経営状態を時系列で比較したり、競合他社と比較したりしながら、自社の強み弱みをしっかりと判断し必要な対策を打ちましょう。
T 「貸借対照表」とは
「貸借対照表」とは、決算日の時点における会社の「財産一覧表」です。財産には現金や未収金のような「プラス財産」と、借入金や未払金等の「マイナス財産」があります。そして、この「プラス財産」と「マイナス財産」の差額が正味財産であり、「資本」と呼ばれます。
U 貸借対照表のここに注目!(以下は、2004年5月にも掲載しています)
【1】 短期(一年以内)の返済能力はどうか?→「流動比率」
「流動負債(主に一年以内に返済する負債)」は「流動資産(現金等+一年以内に現金化する資産)」で返済したいものです。そのためには、「流動負債」<「流動資産」でなければなりませんね。この差額が大きければ大きいほど短期の支払い能力は高いことになります。
【2】 会社の健全性、安全性はどうか?→「自己資本比率」
「マイナス財産」と「資本」の合計額にしめる資本の割合が高いほど会社の健全性、安全性が高いのです。マイナス財産は借入金に代表されるように返済をしなければならないものです。他方「資本」は株主からの資金を中心とするもので返済の必要はありません。返済不要なものの比率が高ければ当然会社の財務は安定し、健全性、安全性はより高いことになります。
【3】 固定資産は自己資本(資金)でまかなっているか?→「固定比率」
工場等の固定資産の購入に充てられた資金は、その固定資産の利用期間を通じて実にゆっくりと、のんびりと回収されていきます。そこで、もし固定資産の購入資金を借入金で賄った場合、借入金は借入先へ返済の必要があるために早期に現金を必要としますが、固定資産の活用から得られる利益(現金)はその回収までに長期間を必要とするので、十分な返済資金を生み出すことが不可能な状況となります。このことからわかるように、固定資産は返済不要な資金、つまり自己資本で購入することが基本となるのです。さらに、固定資産の全額を自己資本(資金)で賄うことが出来なければ、借入金に頼ることになりますが、その場合は返済期間のより長い資金である長期借入金から充てることが望まれます。
【4】 資産を経営に有効活用しているか?→「総資本経常利益率」
会社が借入をしてまで工場等の資産(財産)を保有するのは、その資産を経営活動において積極的に活用し、より多くの利益をあげるためです。言い方を変えれば、利益を生み出すために活用されていない資産は、保有する意味がないのです。資産を経営に有効活用しているかは「プラス財産」の額と経常利益との比較で判断できます。(「経常利益」÷「プラス財産」)の数値が高ければ高いほど資産の活用がなされてることになります。
税理士 田中利征
決算書の読み方!―損益計算書編―
決算二表(貸借対照表、損益計算書)のうち、損益計算書の読み方を見ていきます。単に利益が出たか出ないかでは無くて、どのような活動からどれだけの利益が得られたのかをしっかりと分析してみましょう。
T 「損益計算書」とは
損益計算書とは、一事業年度(通常一年)にどのくらいの儲けがあったかを計算した表で、一事業年度に生じた全ての収益(売上高等)とこれに対応する全ての費用(売上原価等)とを対応させて記載し、当期純利益を示したものです。
損益計算書(簡略一部省略)
【1】 |
売上高 | (+) |
1,000,000 |
← |
会社本来の営業活動(商品販売等)から生じた収益 |
【1】 |
売上原価 | (−) |
450,000 |
← |
当期に販売した商・製品の仕入原価・製造原価 |
【2】 |
売上総利益 | 550,000 |
← |
「売上高−売上原価」の販売利益(粗利ともいう) | |
| 販売費及び 一般管理費 |
(−) |
200,000 |
← |
商品販売に要した費用及び会社全体の管理費用 (例)給与、法定福利費、通信費、水道光熱費、交際費、会議費、地代家賃等 |
|
【3】 |
営業利益 | 350,000 |
← |
会社本来の営業活動から生じた利益で営業活動の成果 | |
| 営業外収益 | (+) |
20,000 |
← |
会社本来の営業活動以外から生じる経常的な利益 例)受取利息、受取配当金、仕入割引等 |
|
| 営業外費用 | (−) |
10,000 |
← |
会社本来の営業活動以外から生じる経常的な費用 例)支払利息、売上割引等 |
|
【4】 |
経常利益 | 360,000 |
← |
会社が経常的に獲得できると期待される利益 | |
| 特別利益 | (+) |
50,000 |
← |
臨時又は偶発的に生じた利益(例)固定資産売却益等 | |
| 特別損失 | (−) |
60,000 |
← |
臨時又は偶発的に生じた損失(例)災害損失等 | |
【5】 |
税引前利益 | 350,000 |
← |
法人税等を計上する前の段階の利益 | |
| 法人税等 | (−) |
140,000 |
← |
会社利益に対しる法人税、住民税、事業税 | |
| 当期利益 | 210,000 |
← |
法人税等控除後の当期の最終利益 |
U 損益計算書のここに注目!(以下は、2004年5月にも掲載しています)
【1】売上高と売上原価−小売業で言えば製品の販売高とその仕入原価の関係です。商売の原則はより大きな利益の追求ですから、原価率(売上原価÷売上高)は出来るだけ小さい方が理想です。過年度の決算書と比較したときに売上高が増えていてると一見順調と思えますが、原価率が大きくなっている場合は商品一個あたりの利益が減少しているので、「売ったわりには意外に儲からない」状態に陥りつつあるかもしれません。原因としては、仕入先との交渉力の低下による仕入原価の上昇、物流コストの上昇、ライバル企業の出現による主力商品の競争力低下や新商品(原価率が低い(儲かる))の開発遅れや市場への投入ミスなど様々な理由が考えられます。
【2】売上総利益−1年間の経営活動で生じる全ての費用を賄う利益です。この利益が売上高に比して大きければ大きいほど商製品一個あたりの販売利益が大きいわけですから、理想的な経営状態と言えます。逆にこの売上総利益があまりに振るわないと、この後に表示される「販売費及び一般管理費」を賄うことができないこともあり、通常の事業活動をしているだけで赤字を出してしまいます。そうなったら根本的な事業の見直しをするしかないでしょう。
【3】営業利益−ここで利益が出ていれば会社の営業活動は概ね正常と言えます。赤字ですと、現在の事業のスキームに問題があるかもしれません。一般的には赤字の原因は「販売費及び一般管理費」の負担が大きすぎるからと考えますが、もしかしたら売上総利益が少な過ぎる(商製品の安売り等を行い十分な利益を確保できていない)ことが原因かもしれません。
【4】経常利益−毎年経常的に獲得できると期待される利益であり、企業の業績をあらわすバロメーターとして重視されることもあります。営業利益がいいのに経常利益が悪い場合、借入金の利息負担が原因となっていることが多いです。経常利益は「けいつね」と呼ばれることもあります。
【5】税引前利益−経常利益は赤字でも何とか税引前利益を黒字で確保したい場合、不動産を処分して特別利益を計上することがよく行われます。また不動産の処分は単なる(利)益出しの効果だけでなく、不動産購入時の借入金を売却資金で返済できる(財務リストラ)というメリットが同時にあります。
税理士 田中利征
社会保険の報酬月額算定基礎届をお忘れなく!
保険料を決定する時期は、[1]資格取得時、[2]定時決定時、[3]随時決定時、の3つがあります。
7月は定時決定の月であり10日までに必要な手続きを行う必要があります。
定時決定とは、7月1日現在の全被保険者を対象に、4月〜6月までの3ヶ月分の報酬の額に従い新しい標準報酬を算定することです。この定時決定のために社会保険事務所へ提出する書類は「被保険者報酬月額算定基礎届」と呼ばれています。
社会保険事務所で決定した新しい標準報酬は、9月分の保険料から適用されることになります。よって、一般には10月支払の給与から保険料が変更されることになるわけです。
なお、大幅な昇給(降給)があった場合は標準報酬月額を改定しなければなりません。
これを随時改定と言います。随時改定は次の3つの条件がすべて該当した時に行われます。
- 固定的給与の変動があった時
- 固定的給与の変動があった月以降3ヶ月の給与の支払基礎日数が20日以上あること/LI>
- 3ヶ月間の給与の標準報酬が2等級以上変動した時
税理士 田中利征]
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