2005年12月掲載
How to 年末調整(Part1)
T 年末調整とは
年末調整とは、毎月(日)の源泉徴収税額の合計額と年税額とを一致させる事務です。給料や賞与などの給与所得について、源泉徴収制度のもとにおいて毎月(日)源泉徴収してきた税額の1年間の合計額は、年の中途で扶養親族等に異動があってもさかのぼって源泉徴収税額を修正しないとか、各種の保険料控除、配偶者特別控除や住宅取得等特別控除又は住宅借入金等特別控除に相当する控除が行われていないなどの理由によって、その人の年間給与総額について納めなければならない年税額とは一致しないのが普通です。この不一致を精算する事務が「年末調整」です。
U 年末調整を行う時期
通常、年末調整は12月に行います。
年末調整を行う時期は、「年末調整」という字句のとおり、通常は12月において本年の最後の給与を支払う時になります。
したがって、本年最後に支払う給与が通常の給与(月給等)であれば、その通常の給与を支払う時となり、年末手当等の賞与が最後の給与であれば、その賞与を支払う時ということになります。
ただし、年末の賞与が通常の給与より先に支払われるような場合には、その賞与を本年最後に支払う給与とみなして、その賞与の支払の時に年末調整を行うことができることになっています。この場合の年末調整は、その賞与を支払う時点で、その後に支払われる12月分の通常の給与の見積額及びその見積額に対する徴収税額を含めたところで行うことになります。
V 年末調整の対象となる人ならない人
年末調整は、扶養控除等申告書の提出者で、給与の収入金額が 2,000 万円以下の人について行います。
年末調整は、本年最後の給与を支払う時において、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下「扶養控除等申告書」といいます。)を提出している人で、本年中に支払うべきことが確定した給与の総額(本年中途で就職した人で、その就職前に他の給与の支払者に「扶養控除等申告書」を提出して給与の支払を受けていた人については、その給与を含めた総額)が2,000万円以下である人を対象にして行います。
1 年末調整の対象となる人
次のいずれかに該当する人((1)〜(4)のいずれかに該当する人のうち、同時に(5)(6)(8)(11)のいずれかに該当する人を除きます。)
(1) |
1年を通じて勤務している人 | ||
(2) |
年の中途で就職し、年末まで勤務している人 | ||
(3) |
年の中途で退職した人のうち、 | ||
イ |
死亡により退職した人 | ||
ロ |
著しい心身の障害のために退職した人で、その退職の時期からみて、本年中に再就職することが明らかに不可能と認められる人 | ||
ハ |
12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人 | ||
ニ |
いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、次の要件を満たしている人 | ||
1. |
その年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下であること | ||
2. |
退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受ける見込みがないこと | ||
(4) |
年の中途で、海外支店勤務などの理由で出国して、非居住者となった人 | ||
2 年末調整の対象とならない人
次のいずれかに該当する人
(5) |
本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人 | ||
(6) |
災害により被害を受けて、「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」により、本年分の給与に対する源泉所得税の徴収猶予又は還付を受けた人 (注) 阪神・淡路大震災で被災した人が、雑損失の繰越控除に係る源泉所得税の徴収猶予の適用を受けている場合も、年末調整の対象となりません。 |
||
(7) |
年の中途で退職した人で、(3)以外の人 | ||
(8) |
2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に「扶養控除等申告書」を提出している人(月額表又は日額表の乙欄適用者) | ||
(9) |
継続して同一の雇用主に雇用されない日雇労務者など(日額表の丙欄適用者) | ||
(10) |
日本に住所又は1年以上の居所のない人(非居住者) | ||
(11) |
年末調整を行う時までに「扶養控除等申告書」を提出していない人 | ||
(注1) 「扶養控除等申告書」は、扶養親族等がない人でも、原則として提出しなければなりません。この申告書を提出することができないのは、上記の(8)〜(10)のいずれかに該当する人だけです。
W 年末調整の準備
年末調整に当たっては、その準備として次の事務が必要です。
年末調整による正しい税額を算出するためには、その準備として、次に掲げる事務を行う必要があります。
- 扶養控除等申告書による扶養控除額等の検討 (控除対象配偶者、扶養親族、障害者、老年者、寡婦、寡夫、勤労学生)
- 配偶者特別控除申告書による配偶者特別控除額の検討
- 保険料控除申告書による各種保険料控除額の検討 (生命保険料・個人年金保険料、損害保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金)
- 住宅取得等特別控除申告書による住宅取得等特別控除額の検討
- 給与の金額、給与から控除した社会保険料の金額及び月(日)々の徴収税額の集計
税理士 田中利征
How to 年末調整(Part2)
X 年税額の計算
1 年税額の求め方
給与所得者各人の本年分の給与の総額、徴収税額、控除対象配偶者や扶養親族、障害者等の数、保険料控除額などが明らかになれば、次に、各人ごとの平成17年分の給与の総額について納付しなければならない年税額(以下「平成17年分年税額」といいます。)を計算することになります。
2 平成17年分年税額の計算の手順
(1)「給与所得控除後の給与等の金額」の計算
年税額を計算するには、まず、本年中に支払うべき給与の総額から給与所得控除額を控除しなければなりませんが、この「給与所得控除後の給与等の金額」は、給与の総額について給与所得表(税務署にあります。「年末調整」に関する図書にも収録されています。)を適用して求めます。
なお、本年中に支払った給与の総額が660万円以上の人については、給与所得表に掲げる一定の算式に従って給与所得控除後の給与等の金額を計算します。この場合、求めた給与所得控除後の給与等の金額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。
(2)「課税給与所得金額」の計算
(1)により求めた「給与所得控除後の給与等の金額」から次に掲げる金額を控除して計算します。
この場合、計算した金額に1,000円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。
- その年中の給与から控除された社会保険料及び「保険料控除申告書」により申告された社会保険料や小規模企業共済等掛金がある場合には、それらの金額
- 「保険料控除申告書」により申告された生命保険料、個人年金保険料及び損害保険料の金額がある場合には、それらの金額に係る生命保険料控除額及び損害保険料控除額
- 「配偶者特別控除申告書」により申告された配偶者特別控除額
- 「扶養控除等申告書」により申告された控除対象配偶者(又は老人控除対象配偶者)、扶養親族(又は特定扶養親族、同居老親等、その他の老人扶養親族)及び障害者等の有無とそれらの数に応じ「平成17年分の配偶者控除額、扶養控除額、基礎控除額及び障害者等の控除額の合計額の早見表」を適用して求めた金額
3 「年税額」の計算
「年税額」は、上記「2の(2)」により求めた「課税給与所得金額」について、「平成17年分の年末調整のための所得税額の速算表」を使用して求めます。
4 「年調年税額」の計算
「年調年税額」は、3により求めた「年税額」から住宅借入金(取得)等特別控除額を差し引いて計算します。
なお、住宅借入金(取得)等特別控除額が「年税額」より多いときは、その控除額は「年税額」の範囲にとどめ、控除しきれない部分の金額は切り捨てます。したがって、このような場合の「年調年税額」は「0」となります。
5 定率減税の処理の仕方
(1) 年調定率減税適用対象者の決定
平成17年分の年末調整の対象者で、かつ、年調年税額(住宅借入金(取得)等特別控除後)のある人が年調定率減税の適用対象となりますので、対象となる人を抽出します。
(2) 年調定率控除額の計算
平成17年中に支払の確定した給与等につき「2 平成17年分年税額の計算の手順」に従って求めた年調年税額の20%相当額(その金額が25万円を超えるときは、25万円を限度とします。)の年調定率控除額を計算します。
(3) 年調定率控除額の控除
4で求めた年調年税額から5の(2)年調定率控除額を控除した残額(控除しきれない場合は「0円」)が平成17年分年税額となります。
6 差引超過額(還付)又は不足額(徴収)の計算
平成17年分年税額と既に徴収済みの源泉徴収税額の合計額とを比較して過不足税額を求めます。徴収税額の合計額が平成17年分年税額より多いときのその差額は超過(還付)額となり、逆に徴収税額の合計額が平成17年分年税額より少ないときのその差額は不足(徴収)額となります。
税理士 田中利征
定率減税の廃止決まる?
定率減税とは、平成11年度税制改正によって導入された制度です。その内容は、平成11年分以後の所得税と平成11年度分以後の個人住民税について、景気回復を目的として、本来の税額から、定率により計算された「税額控除の額」を控除するというものです。
減税率については、景気が回復傾向にあるとの判断から、平成17年度税制改正で平成18年分所得税から10%(12.5万円を限度)へと半減されることが決定していました。
国民の関心は、平成19年分以降はどうなるのか?、にありましたが、どうやら廃止となる公算が大きいようです。定率減税の撤廃による影響については、多くのシンクタンクから様々なデータが公表されていますが、これらの資料をベースに計算してみると、平成21年度には実質民間消費で1%強低下するとの結果になります。
定率減税の縮小・廃止の影響が明らかになるまでにはまだ数年ありますが、廃止も決まりと言えるような現状では、今後の景気に与える影響ができるだけ少ないことを祈るばかりです。
それでは、本年の年末調整では貴重な定率減税をお忘れなく。
税理士 田中利征
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