2007年7月掲載
減価償却制度、法人と個人(所得税)の違いに注意
法人個人に関係なく、減価償却方法は定額法か定率法かの選択が認められています。そして、企業が減価償却方法を選択して届け出ない場合は、税法が減価償却方法を決定することとされています。
税法が決める減価償却方法は、個人(事業)が定額法、法人が定率法とされています。法人と個人で償却方法が異なるのですから、同一の減価償却資産に対して計算する減価償却費も違う金額となります。
個人事業者が法人成りするケースでは、個人での減価償却方法である定額法を選択した場合には、従来と同じ計算方法で問題はありません。よくあるのが法人成りした後減価償却方法を選択・届け出ないケースで、この場合は、法定の償却方法である定率法を採用することになります。法人成り後も定額法で償却したい場合、必ず定額方法を選択・届け出る必要があります。
法人が定率法で減価償却を実施するなら、税務署への減価償却方法の届出を省略することも一法です。届け出なければ、自動的に法定の償却方法である定率法が適用されることになります。
定率法は、定額法に比して早い時点でより多くの減価償却費が計上されることになります。そのため、収益力のある企業には、定額法に比して早期に投資額が回収できる有利な方法とされています。
税理士 田中利征
定率法から定額法への変更が増加?
新たな減価償却方法である250%定率法がこの4月から導入となりました。250%定率法は、これまでの定率法(以下「旧定率法」という)に比して減価償却費の計算方法が複雑・面倒になりました。旧定率法では、手計算でも簡単に正確な償却費を、資産の取得から除却時まで計算することができました。しかし250%定率法では、ソフトウェアを利用しなければ、償却費の計算間違いが続出するのではないでしょうか。
250%定率法のメリットとして、旧定率法よりも多くの減価償却費を早期に計算するので、中小企業の早期償却、節税を支援する償却方法になる、と宣伝されています。確かに税法で認める償却費が増えれば、増加した分だけ節税効果はあります。
問題は、250%定率法で計算される償却費の負担に耐えるだけの利益を上げられていない中小企業が多数存在することです。これらの会社では、250%定率法で計算した減価償却費を損益計算書へ計上すると赤字決算となってしまいます。
減価償却費の計上による赤字決算対策は、従来なら減価償却費を減額して計上することで避けてきたのです。しかし、新会社法で導入された会計参与をおいた会社では、減価償却費の減額調整が難しくなります。決算の信頼性を高めるために取り入れた会計参与制度のため、会社の評価の基本となる大切な会社決算が赤字となってしまうのです。
減価償却費を原因とする赤字決算を避けるため、実務では250%定率法よりも初期の減価償却費が少なくなる定額法へと償却方法を変更することも検討されています。法人の償却方法といえば定率法が中心でしたが、会計参与と250%定率法の影響で、意外と定額法の人気が出てくるかもしれません。
税理士 田中利征
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