2012年8月掲載
意外と知られていない所得税増税
1.復興特別所得税(2013年以降)
今までの所得税に2.1%上乗せされる税金が「復興特別所得税」です。マスコミもあまり取り上げていないのでご存じでない方も多いようです。
事業主なら、個人の確定申告をして納める税金が発生すれば、今までの税金より2.1%を上乗せして支払うことになります。会社員なら、毎月天引きで徴収される源泉所得税に2.1%が上乗せされます。
開始は平成25年1月1日からで、25年間もの長い間上乗せされるのです。高額所得者は上乗せの対象となる税額が大きいだけに、25年間での負担総額は相当なものとなります。
2.上場株式等の譲渡益、配当に係る課税(2014年以降)
上場株式等の譲渡益に係る税率は、特例により、平成25年12月31日までは 10%(所得税7%、住民税3%)の軽減税率が適用されています。
しかし、平成26年以降は原則20%(所得税15%、住民税5%)の税率に戻ります。高額所得者ほど金融商品に対する投資額も大きいため、投資コストの大幅な増大となります。
税理士 田中利征
見送られた相続税制改正
6月26日、衆議院本会議では「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」を修正可決し、同法案は参議院へと送られました。
平成27年から改正を予定されていた改正案で法案から削除された主な項目は次のとおりです。
■基礎控除改正は先送り
相続税の基礎控除改正は平成25年度税制改正へと先送りされました。
基礎控除改正は、基礎控除額を現行の6割相当へと縮小するというものです。改正案では、基礎控除の額は次の算式で求めた額になります。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
現行の基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数とされているので、極めて大幅な増税案となっています。
■税率のアップ
改正案は、新たな税率区分として課税財産2億円超3億円以下には税率45%を設け、課税財産6億円超に対しては55%の税率を新設するというものです。
現行の最高税率は、3億円超に対する50%なので、資産家の方にはかなりの痛手となります。
■生命保険金の非課税額の引き下げ
現行では、死亡保険金について「500万円×法定相続人の数」が非課税とされています。
改正案では、控除が認められるのは法定相続人のうち、未成年・障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一の相続人に限られることになります。そのため、死亡した親から独立していた子供には非課税枠はありません。
■未成年者控除・障害者控除に引き上げ
未成年者控除は、20歳までの1年につき、現行の6万円が10万円へ、障害者控除は、85歳までの1年につき、現行の6万円が10万円(特別障害者は20万円)へ、とそれぞれ引き上げられます。本改正は貴重な減税項目です。
■相続時精算課税の要件緩和
改正案では、贈与する者の年齢要件が、現行の65歳以上から60歳以上へと引き下げられ、適用を受けられる贈与者の範囲に20歳以上の孫が追加されました。本改正は、生前贈与を促進するための策としての改正です。
税理士 田中利征
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