年が明けて平成29年1月からセルフメディケーション税制がスタートします。多くの方々に関係する税制でありながら、現時点での認知度が極めて低いセルフメディケーション税制についてみていきます。
セルフメディケーション税制
1.概要
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)とは、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。
2.概要の「一定の取組」とは
申告者が、申告対象となる1年間(1月〜12月)に、次に掲げるいずれかを受けることをいいます。
- 特定健康診査 (いわゆるメタボ健診)
- 予防接種
- 定期健康診断 (事業主健診)
- 健康診査
- がん検診
3.概要の「スイッチOTC医薬品」とは
OTC医薬品(要指導医薬品および一般用医薬品)で医療用医薬品から転用された82成分を含むものです。82成分は、厚生労働省のホームページに掲載されており、 イブプロフェン(非ステロイド系消炎鎮痛剤)やインドメタシン(非ステロイド性抗炎症薬)などどこかで耳にしたような成分もあります。
スイッチOTC医薬品の表示
医薬品の製造メーカーにて、対象となるOTC医薬品のパッケージ右上に識別マークを印刷またはシールにて貼付される場合が多数ですが、本マークの表示に法的義務はないため、メーカーの生産の都合等の理由から表示されていない対象製品もあります。
対象となる個人とは
以下の3つの全てに該当する必要があります。
- 所得税、住民税を納付していること
- 1年間に健康の維持増進および疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っていること
- スイッチOTC医薬品の1年間の購入金額が12,000円(扶養家族分を合算)を超えていること
セルフメディケーション税制による所得控除額
所得税率20%で対象製品を年間5万円購入した方が確定申告をした場合、戻る税金は次のとおりです。
- 所得税
(50,000−12,000)円×20%=7,600円
- 住民税(翌年度)
(50,000−12,000)円×10%=3,800円
- 減税総額
11,400円(所得税+住民税)
従来の医療費控除制度との関係
従来の医療費控除制度とセルフメディケーション税制を同時に利用することはできません。どちらからの選択適用となるので注意が必要です。医療費控除制度の対象とはならない方がセルフメディケーション税制により税金の還付を受けることが可能となったのはメリットと言えます。
税理士 田中利征
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