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税理士田中先生のワンポイントアドバイス
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(2024年11月30日掲載)
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(2024年11月30日掲載)
税理士田中利征先生に聞いてみました。
新会社法を無視し旧商法のままの決算書を銀行へ提出したなら、銀行はまず決算書の信頼性に「?マーク」を付けるでしょう。自社の真実な経営実態を表す決算書です、として銀行へ提出する決算書に、「株主資本等変動計算書」がなく、もはや世に存在しない「利益処分計算書」が鎮座していたなら、その決算書を信頼してくれという方が無理というものでしょうから。
銀行は、従来から中小企業が提出する決算書の信頼性に関して少なからず疑念をいだいています。法制度上、中小企業は上場企業のような会計監査が実施されておらず、中小企業の殆どが同族経営のために、経営者の判断一つで決算数値を操作する事も可能だからです。こうした銀行の基本姿勢がある中で、旧商法のままの決算書を銀行へ提出することは絶対に避けなければいけないと思いませんか。
さらに銀行から、この会社は、経営全般にわたり法令遵守(コンプライアンスという)が行われていないおそれがあるな、と判断されるかもしれません。提出した決算書が原因で、経理部門だけでなく、経営全般に対する信頼性までも疑われる危険性も無視できませんね。確かに、私の経験からも一つの法律の規定を軽視する会社は、他の多くの法律も同様に軽視している場合が多いようですから。
銀行の融資姿勢は、旧来の担保の価値にウェイトを置いて融資の可否や条件を決定する担保主義から、企業の業績評価にウェイトを置く業績主義へと変わってきました。そのため、全ての銀行では、企業の業績に従い取引先企業をランク付けする、いわゆる「格付け」を実施しています。
現在の融資はこの格付けを中心にして、融資の可否や金利条件、担保の内容などが決められています。この格付けの評価項目には、決算書数値をはじめ、コンプライアンスや経営者の人物評価など実に様々な項目があげられています。
脱担保偏重、格付け中心の融資姿勢は今後さらに強化されていくでしょう。こうした中で会社が今後も旧商法の決算書を銀行へ提出するということは、会社自らが会社の「格付け(ランク)」を下げ、融資に不利となる状況を作りだしていることになるでしょう。
今現在税務署では、法人の決算書を新会社法へと対応するように、わざわざパンフレットなどを作成して啓蒙活動を行っている最中です。さらに税務署だけでなく、法務省、中小企業庁あるいは商工会や法人会などの経済団体も同様に決算書の新会社法対応を推進しています。
このような活動の成果から、小規模零細企業でも秋頃には多くの会社が経理業務において新会社法対応を終えてくるようです。ですから、遅くてもこの秋までには新会社法への対応を完了しておくべきでしょう。
今後も旧商法のままの決算書を税務署へ提出するとなると、この会社は法令を尊重・重視する会社ではないな、というイメージを税務署は持つでしょうね。そして、法人税の決まりも、新会社法同様に守られていないのかも?などと考えるのが普通ではないでしょうか。新会社法の決算書で要求されている株主資本等変動計算書がないため、自社の法人税申告の妥当性を疑われる可能性があるとしたなら、それは会社として絶対に避けなければいけませんね。
会計ソフトにより経理をされている会社では、新会社法への対応は、ソフトのバージョンアップ等で簡単に完了するはずです。今現在お使いの会計ソフトのサポートセンターへ、新会社法対応の方法などを問い合わせてみてください。
現在会計ソフトの購入をご検討されているなら、購入のポイントに、株主資本等変動計算書の作成をソフトが自動的に行うこと、を必ず加えてください。ソフトによっては、株主資本等変動計算書の作成にワープロソフトや表計算ソフトを使うこととし、手入力により作成を行うソフトもあります。株主資本等変動計算書の作成を手作業で行うと、会計の専門家でもない限り間違いがとても起こりやすくなります、ここは大事なポイントですよ。
(2024年11月30日掲載)
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