基礎知識編−減価償却制度
減価償却ってなあに?
経営活動とは投資と回収の循環です。投資額を回収して増えたお金が、儲けです。
商品は、販売の都度、投資額(購入額)を回収します。販売にかかる経費は、発生した期間(月)の収益から回収します。固定資産(設備や機械)は、投資効果が長期におよぶので、その資産が稼動できる期間の収益から回収します。
会計とは、ある意味、この循環を記録して、儲けと運用状況を管理し報告する仕組みです。会計報告は事業年度単位で行われるので、固定資産の投資額を、年度に配分する(費用化する)手続が必要になります。この計算手続きを、減価償却とよびます。
減価償却の効果
減価償却には、次のようなメリット(効果)があります。
節税効果
減価償却費は損益計算書に費用として計上されます。これを節税というのも変かもしれませんが、費用化した分、利益が減り、その分、税金を減らす効果があります。費用化しないと、減価償却分の利益から余分に税金を納めたことになります。
法人の場合は、減価償却をしなくても、除却時に、除却損または譲渡損で、利益を圧縮できますが、個人事業の場合は、強制償却を基に除却原価が決められるので、回収するチャンスを失ってしまいます。投下資金の回収分まで余分な税金を払わないためには、毎年きちんと減価償却することをお勧めします。
適正な損益を把握する
経営状態を把握し、意思決定する上で、適正な会計情報を入手することは、とても重要です。適正な会計情報には、適正な会計手続きが必要です。固定資産の費用化には、減価償却はかかせません。
さらに税法では課税の公平を期するため(同じ経営内容で納税額が変わらないようにするため)、償却方法や耐用年数(回収年数)を法令で決めています。
自己金融効果
減価償却費は、支出を伴わない費用なので、資金の流出がありません。損益計算書上の利益は減りますが、資金が手元に残ります。これを自己金融機能といいます。利益にならないので、分配される心配も、課税される心配もありません。資産の買換えに必要な資金を内部留保できます。
減価償却費計算の概要(旧償却法)
減価償却は、固定資産に投資した金額を、稼動する期間から回収する手続ですが、概要をもう少し詳しく説明します。
固定資産に投資した金額を取得価額といいます。取得価額には運搬費用、設置費用など付随する費用を含みます。回収対象となる金額は、取得金額から稼動期間終了後に除却したときに回収できる見積もり金額を引いた金額です。この見積もり金額を残存価額といい、10%で計算します。稼動期間は耐用年数といい、資産ごとに法令で決められています。配分額を決める計算方法を償却方法といい、定額法と定率法に分かれます。
定額法は、償却対象金額を、耐用年数で割って、均等額を回収する方法です。 償却費が定額なので、損益を比較するにも、わかりやすいことが特徴です。
定率法は、資産の生産能力に着目した償却方法です。資産は年数を経ると能力が落ち、機能が高い新製品も現れます。毎期の簿価から一定率を償却するので、定率法と呼びます。償却費は最初が大きく、だんだん小さくなるので早期に回収できることが特徴です
償却率は耐用年数経過時に資産価額が10%になるよう決められていますが(実務では耐用年数表を引きます)、税法上、5%になるまで、償却することができます。
平成19年税制改正
平成19年4月1より、減価償却の制度が大きく変わりました。国際競争を配慮し、諸外国の会計制度に合わせた改正を行いました。投資額の早期回収を図り(自己金融機能です)設備更新に弾みをつけることが目的です。
改正後に取得した資産は、備忘価額1円(貸借対照表に残すため)まで償却できます。さらに、定率法は、定額法の250%という大きな償却率が適用されました。改正前に取得した資産については、通常償却は前のまま計算し、残存価額に達した資産を、1円まで償却できるよう変わりました。
メリットのある改正ですが、新旧償却制度に対応する必要性があること、計算が面倒になったことなど、事務に負担が増えることになったのは確かです。コンピュータ処理は必須になったのではないでしょうか。
それでは、個別の償却制度について説明します。