基礎知識編−その他の償却制度について
特別償却/割増償却
特別償却(広義)とは、時限立法である「租税特別措置法」に規定された償却制度です。
内容は、設備投資による景気浮揚などの経済政策、企業のIT化促進などの産業政策上の観点から、
一定の要件を満たす青色申告の企業(例外あり)に対して、通常の減価償却の他に別枠で計算した特別な減価償却の上乗せを認めた制度です。
特別償却制度には多くの種類がありますが、次のような制度は比較的よく利用されています。
- 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却
- 情報基盤強化設備等を取得した場合の特別償却
- 優良賃貸住宅等の割増償却
- 倉庫用建物等の割増償却
特別償却は、その償却限度額の計算方法から「特別償却」と「割増償却」の2つに区分されます。
特別償却
特別償却限度額(取得価額×特別償却率)が、普通償却に上乗せされます。
計算例
前提:取得価額 600万円/耐用年数に応じた償却率0.438/特別償却率50%
普通償却限度額 600万円×0.438 =262.8万円
特別償却限度額 600万円×0.5(50%)=300万円
合計 562.8万円
割増償却
割増償却限度額(普通償却限度額×割増率)が、普通償却に上乗せされます。
計算例
前提:取得価額 400万円/耐用年数に応じた償却率0.125/割増率20%
普通償却限度額 400万円×0.125 =50万円
割増償却限度額 50万円×0.2(20%)=10万円
合計 60万円
一括償却
取得価額が10万円以上20万円未満の固定資産については、
一括して3年間(法人は36ヶ月)で償却できる制度があり、一括償却の制度と呼ばれています。
一括償却を選択した資産については、固定資産税(償却資産税)の対象になりません。
計算方法
※個人の場合は、3年間で均等償却します。
少額資産の損金参入の特例
取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、その取得価額の全額を必要経費に算入する事ができる制度です。
ただし、即時償却ができるのは、取得価額の合計額が、一事業年度(1年間)で300万円までの資産に限られます。
そのため、合計すると300万円を超える資産からは、通常の減価償却をしなければなりません。
繰延資産の償却
繰延資産は、その支出の効果が及ぶと期待される期間にわたり「均等償却」するものと、 当該繰延資産の残額を「任意に償却」することができるもの、の2つに分けることができます。
均等償却
支出の効果が及ぶと期待される期間(月数)にわたり、残存価額は「0」で「均等償却」していきます。
税法が繰延資産として定めた次のものがこれに該当します。
- 共同的施設の負担金(商店街のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯などを設置 するために支出したもの)……5年で償却
- 権利金、立退料(事業用の建物を賃借するために支出したもの)
- 賃借建物の新築に際し、所有者に支払うもので、その額がその建物の賃借部分の建築費の大部分を占め、しかもその建物の存続期間中賃借できるもの……その建物の耐用年数の70%の年数で償却
- 明渡しの際に借家権として転売できるもの……その建物の賃借後の見積耐用年数の70%の年数で償却
- その他のもの……5年で償却(賃借期間が5年未満のものは、その期間)
具体例
- 前提条件 3月決算の会社
- 支出額 180万円
- 支出月 2月(同月から事業供用)
- 支出効果期間 6年(72ヶ月)
- 支出事業年度の償却費
180万円×( 2ヶ月÷72ヶ月)= 5万円 - 翌事業年度の償却費
180万円×(12ヶ月÷72ヶ月)= 30万円
公共下水道に係る受益者負担金
任意償却
繰延資産の残存価額が償却限度額とされます。そのため、帳簿価額の全額を償却して、当該事業年度の経費とすることも可能です。 開業費や試験研究費、開発費などの会社法上の繰延資産の多くがこれに該当します。